地震予測情報

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2016年9月28日発行(Vol.16,No.39)

地震予測サマリ-

〇警戒レベルアップ地域

なし

〇警戒レベルダウン地域

なし

地震予測サマリー

〇概況

・週間変動(H)で4cm超の異常が見られた点は10点。その内5cm超の点は3点。 今回まとまって異常変動(H)が見られた地域は伊豆半島・伊豆諸島・小笠原諸島で合計7点。

・X,Y,Zの4cm超の週間異常変動を示した点は鹿児島県の鹿屋でX=4.1cm、Y=5.0cm。Hも7.5cm。

・隆起・沈降は、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国は隆起傾向だが、四国、九州、沖縄は沈降傾向。

〇レベル5

(震度5以上の地震の可能性が極めて高く緊急性がある)

南関東周辺

〇レベル4

(震度5以上の地震が発生する可能性が極めて高い)

南海・東南海地方

南西諸島

九州

東北・北関東の太平洋岸、奥羽山脈周辺

鳥取県・島根県周辺

北信越地方・岐阜県

〇レベル3

(震度5以上の地震が発生する可能性が高い)

北海道釧路・根室・えりも・中央部周辺

北海道道南・青森県

〇レベル2

(震度5以上の地震が発生する可能性がある)

山口県・福岡県・大分県・愛媛県の周防灘、伊予灘、豊後水道に面する地域

〇レベル1

(何らかの異常変動があり、今後の推移を監視する)

北海道北部

琵琶湖周辺

※X,Y,Z,Hの解説はこちら

http://www.jesea.co.jp/xyzh/

・JESEAは、国土交通省国土地理院の電子基準点データを解析し、 1週間の短期的な高さの変動を表す「週間変動図(H)」と約2~3年間にわたる長期の異常変動の傾向を示す 「隆起沈降図(H)」を毎週掲載し、同じく約2~3年間にわたる長期の傾向を示す 「東西変動図」、「北南変動図」、「水平変動図」の3種類を週替わりで1つずつ掲載しています。

そして水平方向と垂直方向の4週前との変動を矢線と色で表した「水平ベクトル図」も毎週掲載し 多角的に地殻の変動を示します。

・短期的な変動である「週間変動図(H)」と「水平ベクトル図」は毎週変動しますが、 そのほかの図は長期の傾向なので、1週間では変化は少ないですが3週間くらい経つと異常変動が変化していくのが分かります。

【目次】

1.お知らせ

2.特集:沖縄本島近海地震

3.地震予測

4.地震情報一口メモ

5.皆様の街の電子基準点

1.お知らせ

日本列島累積変位マップ(H)の掲載延期について

 今回掲載予定でした日本列島累積変位マップ(H)は、 沖縄本島近海地震の特集記事を優先したため、次回掲載となります。

ご了承ください。

2.特集:沖縄本島近海地震

 2016年9月26日、沖縄本島近海を震源とするM5.6、最大震度5弱の地震が発生しました。

「週刊MEGA地震予測」では前号(9月21日発行)で、下図に見られるように、 南西諸島を含むフィリピン海プレートの境界線付近に沿って異常変動の集中が見られたため、 南西諸島の警戒レベルを3から4とし、一層の注意を呼びかけたところでした。

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 また、南西諸島は数か月間沈降を続けていますが、その中で奄美大島だけは隆起していました。 今回の地震は、奄美大島と沖縄本島の間にある沖永良部島付近で起こりました。

つまり、下図のように隆起エリアと沈降エリアの間が震源でした。

9月14日号でも

「隆起沈降図を見ますと沖縄は沈降していますが奄美大島は隆起に転じました。 (中略)

南西諸島にひずみが貯まっています。」

として注意喚起しておりました。

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3.地震予測

レベル5:南関東周辺

 9月23日、関東東方沖を震源とする地震(M6.7 、震度1)が起きました。 マグニチュードは6.7と大きかったにも拘わらず首都圏は震度1だったので幸いでした。

今回4cm超の週間異常変動(H)が見られた点は、東京都の八丈で4.1cm、大島3で4.1cm、三宅3で4.3cm、母島で4.1cm、 神奈川県の湯河原で4.8cm、静岡県伊豆半島の天城湯ヶ島1で5.3cm、天城湯ヶ島2で4.2cmでした。 伊豆半島および伊豆諸島は要注意です。

隆起沈降図を見ますと駿河湾沿いの西側の地域の沈降が目立ちます。 八丈島が沈降に対し、大島、三宅島は隆起しています。 この周辺はひずみが貯まっていますので要注意です。

北南変動図を見ますと、房総半島南部、三浦半島、伊豆諸島は北変位、他の地域は南変位しています。 ひずみが貯っていますので要注意です。

水平ベクトル図を見ますと、水平ベクトルの向きが複雑に異なる方向をむいており不安定です。 ひずみが貯まっていますので要注意です。

異常が激しいですのでレベル5を続けます。

(参照 図1、図2、図3、図4)

レベル4:南海・東南海地方

 今回4cm超の週間異常変動(H)が見られた点は、和歌山県の日置川で4.0cmでした。

隆起沈降図を見ますと高知県岬部、徳島県および紀伊半島南部が沈降しているのに対し、愛媛県を中心に四国西部は隆起しています。

北南変動図を見ますと、高知県南部は北変位、他の地域は南変位しています。境目に注意です。

水平ベクトル図を見ますと太平洋岸と内陸部で異なる向きをしておりひずみが大です。

10月ごろまでレベル4とします。

(参照 図1、図2、図3、図4)

レベル4:南西諸島

 沖縄本島近海で震度5弱、M5.6の地震が起きました(特集参照)。

隆起沈降図を見ますとこの地域は全体的に沈降しています。

水平ベクトル図を見ますと南東変位が比較的大です。

余震も考慮し、11月ごろまでレベル4とします。

(参照 図2、図4)

レベル4:九州

 依然として熊本地方には余震が続いています。

5cm超の週間異常変動(H)が見られた点は鹿児島県の鹿屋で7.5cm、上屋久1で6.5cmでした。

隆起沈降図を見ますと九州東岸と桜島周辺以外沈降しています。対岸の山口県西部も沈降しています。

北南変動図を見ますと熊本県、大分県、福岡県、宮崎県北部の色の境目に注意します。不安定な状態です。

水平ベクトル図を見ますと熊本と大分を結ぶ線の南北で異なる向きをしていてひずみは大です。

火山活動も視野に入れて注意が必要です。

九州は熊本地震による余震や新たなひずみの発生などのため、しばらく期限を設けません。

(参照 図1、図2、図3、図4)

レベル4:東北・北関東の太平洋岸、奥羽山脈周辺

 宮城県および岩手県沖で小地震が起きています。この地域は地震常襲地帯になっています。

隆起沈降図を見ますと東北・北関東の太平洋岸が隆起しているのに対し、秋田県および山形県を中心とする奥羽山脈は沈降しています。 隆起・沈降の境目はひずみが貯まっていますので要注意です。

水平ベクトル図を見ますと、岩手県、宮城県、秋田県、山形県および福島県は大きく南東方向に変位をしております。

9月までレベル4とします。

(参照 図2、図4)

レベル4:鳥取県・島根県周辺

 鳥取県中部、兵庫県北部で複数回、震度1~3の地震が起きました。

隆起沈降図を見ますと鳥取県、島根県周辺を含めて中国地方全体に沈降が続いています。

水平ベクトル図を見ますとこの地域はほぼ南東変位をしていますが、鳥取のみ東変位をしています。

10月ごろまでレベル4とします。

(参照 図2、図4)

レベル4:北信越地方・岐阜県

 佐渡付近で小地震が起きました。

隆起沈降図を見ますと、石川県および福井県の日本海側および岐阜県で沈降が見られます。 一方で佐渡島を含む新潟で隆起しています。この地域はまだ不安定ですので注意が必要です。

10月ごろまでレベル4とします。

(参照 図4)

レベル3:北海道釧路・根室・えりも・中央部周辺

 浦河沖で小地震が起きました。

隆起沈降図を見ますと依然として根室・釧路周辺に沈降が見られます。

北南変動図を見ますと緑色から青色に色が変わる周辺はひずみが貯まっていると考えられます。

11月ごろまでレベル3とします。

(参照 図3、図4)

レベル3:北海道道南・青森県

 9月26日、浦河沖を震源とする地震が起き、函館市で最大震度4を示しました。 津軽海峡でも小地震が起きています。

隆起沈降図を見ますと奥尻で沈降が見られます。

北南変動図を見ますと、色が急変している地域はひずみが貯まっていますので要注意です。 12月ごろまで監視をします。

(参照 図3、図4)

レベル2:山口県・福岡県・大分県・愛媛県の周防灘、伊予灘、豊後水道に面する地域

 隆起沈降図を見ますと、大分県東部、山口県瀬戸内および四国西部が隆起しています。他の地域は沈降しています。

レベル2とし、今後の監視を継続します。

(参照 図4)

レベル1:北海道北部

 今回は静謐ですが、引き続き監視をします。

レベル1:琵琶湖周辺

 今回は静謐です。隆起沈降図を見ますとこの地域は東側の隆起と西側の沈降の境目に当たります。 引き続き監視をします。

(参照 図4)

図1.週間変動図(H)

計測期間:9月18日~9月24日 速報解(R3データ)使用

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週間変動図(H)の拡大図はこちら

http://www.jesea.co.jp/1009211/

図2.水平ベクトル図

計測期間:9月18日~9月24日 速報解(R3データ)使用

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 図の見方は、水平方向の動きを矢線で、垂直方向の動きを色で表します。 背景画像は4週前の週平均値を基点としたH(高さ、正式には楕円体高)の隆起沈降段彩図(色別の等高図)です。

その背景画像の上に4週前と比べてどの方向に水平変動したかを矢印の向きと長さ(変動の大きさ)で表しています。 短期的な動きを捉えることができます。

矢印の向きが異なるエリアはひずみが貯まっていることを意味します。

1:東北地方:依然として大きく南東に変位しており注意が必要。

2:南関東周辺:水平ベクトルの向きが複雑に異なる方向をむいており不安定。 伊豆諸島は北変位、駿河湾沿いは西変位で注意が必要。

3:南海・東南海:四国全体で異なる向きをしておりひずみが大きく注意が必要。

4:九州:熊本と大分を結ぶ線の北側で北東変位、南側で南東変位でひずみは大きく注意が必要。

5:南西諸島:東変位が比較的大きく注意が必要。

水平ベクトル図の拡大図はこちら

http://www.jesea.co.jp/4009214/

図3.北南変動図

計測期間:9月4日~9月10日 最終解(F3データ)使用

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 図の見方は、緑色、黄色、橙色、赤色、茶色はプラスで北方向に変動していることを表しています。 薄青色、濃青色はマイナスで南方向に変動していることを表しています。 プラスとマイナスが正反対方向に変動する境目や変動が急変している境目の場所はひずみが貯まっていて 地震の時に大きく揺れる可能性が高いです。

1:根室・釧路・えりも:緑から青色に変わる境目に注意が必要。

2:北海道道南・青森:色の急変地域は注意が必要。

3:福島・茨城:色の急変地域は注意が必要。

4:南関東周辺:房総半島南部、三浦半島、伊豆諸島は北変位に対し、他の地域は南変位で注意が必要。

5:四国:高知県南部は北変位、他の地域は南変位で注意が必要。

6:九州:熊本県、大分県、福岡県、宮崎県北部の色の境目に注意が必要。

北南変動図の拡大図はこちら

http://www.jesea.co.jp/3009213/

図4.隆起沈降図(H)

計測期間:9月4日~9月10日 最終解(F3データ)使用

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 2014年1月を基点としたH(高さ、正式には楕円体高)の隆起沈降段彩図(色別の等高図)です。

黄緑・黄色・赤・茶色は数値がプラス(隆起)、青色系統の色はマイナス(沈降)を意味します。 濃い色ほど値が大きいです。地域ごとにどのような傾向があるかを見てください。

1:根室・釧路周辺:沈降があり注意が必要。

2:東北:隆起と沈降の境目および色の末端部に注意が必要。

3:南関東:駿河湾沿いと八丈島は沈降。大島、三宅島は隆起しており注意が必要。

4:北信越・岐阜:隆起と沈降が混在。新潟県は隆起しており注意が必要。

5:四国:高知県岬部、徳島県、和歌山県および三重県南部が沈降、四国西部は隆起しており注意が必要。

6:鳥取・島根:沈降が広く分布しており注意が必要。

7:九州:九州東岸と桜島以外沈降。また山口県も沈降しており注意が必要。

8:南西諸島:全体的に沈降しており注意が必要。

隆起沈降図(H)の拡大図はこちら

http://www.jesea.co.jp/2009212/

4.地震情報一口メモ

[No.184:熊本地震の被害~No.1]

熊本地震の本震(M7.3、最大震度7)は2016年4月16日午前1時25分に起きました。 28時間前の4月14日午後9時26分に前震(M6.5、最大震度7)が起きました。

 前震が大きな地震だったので多くの人はさらに大きな地震が起きるとは考えなかったことが被害を大きくしました。 本震の後も震度6強、6弱、5強、5弱の大きな地震が合計で10回以上も起き、被害をさらに大きくしました。 被害は熊本市から大分を結ぶ線上に集中していました。ほぼ断層に沿っていました。

 益城町および南阿蘇村に被害は集中しています。益城町の中心部は家屋倒壊などで多数が死亡し、役場庁舎も損壊しました。 大きな土砂崩れが起き、阿蘇大橋が崩落して土砂に埋まり、一人が犠牲になりました。 東海大学の学生が住んでいたアパートが倒壊し、12人が生き埋めになり学生3人が死亡したのは痛ましいことでした。

 熊本城の天守閣が損壊し、櫓(やぐら)や城壁の一部が崩落しました。 九州新幹線は回送車両が脱線しましたが、旅客を乗せた車両が被害に巻き込まれなかったのは不幸中の幸いでした。

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